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能の花 狂言の花

一観客として、能楽の面白さの一端を伝えられれば、と思っています。 初めてご来訪の方は「はじめに・・・能狂言に寄せて」のカテゴリーをご一読下さい。これまで書いた鑑賞記の索引を載せています。

栗焼 野村万作(緑泉会例会)

和泉流 喜多六平太記念能楽堂 2018.09.17
 シテ 野村万作
  アド 石田幸雄

栗焼は4年ほど前に大蔵流山本家、泰太郎さんと則孝さんの鑑賞記を書いていますが、好きな狂言の一つです。何度観ても面白い一曲。
本曲は、大蔵流と和泉流で流儀による違いはあまり大きくありませんで、上演時間もほぼ同じです。なによりもまず、シテ太郎冠者が栗を焼く様、焼き上がった栗をついつい食べきってしまう、そのあたりの演技の面白さが眼目ですが、さすがに万作さんの太郎冠者は面白い。見事な一番でした。

ところで大蔵流では、最初に登場したアド主人が、さる方から重の内を戴いたが太郎冠者に「すいさせよう」と言ってシテを呼び出します。一方で和泉流の本には重の内という言葉が入っていませんで、今回の上演でも「すいさする物がある」と言って太郎冠者に当てさせますが、「重の内」の言葉はありませんでした。
この重の内、重箱に入れた食物の意味ですが、江戸時代後期に書かれた貞丈雑記には、昔は重箱というものはなく、「どごんぞう」という狂言(鈍根草のことでしょう)に「宿坊から重の内が参りました」とあるが、この狂言は室町時代に作られた狂言ではなく、後の世に作られた狂言だろう、と書かれています。注釈として重箱自体は室町時代にもあったが表向きには出てこない物だったともあります。
なるほど、そんなものかと思いますが、「鈍根草」も狂言記には貞丈雑記の通りの表現がありますが、和泉流狂言大成の鈍根草には重の内の言葉ありませんで、この辺りは不思議なところです。

また大蔵流では、太郎冠者が重の内を推量して菓子の類でござろうと饅頭、羊羹などと言い、また果物の類なら梨、柿、葡萄などと推量します。一方、今回の和泉流の形では、源平餅か花せんべい、饅頭の類と推量します。和泉流狂言大成にもこの形で書かれていますが、果物は出てきません。この源平餅と花せんべいですが、現在では源平餅を四国高松の吉岡源平餅本舗が、花せんべいを京都の鶴屋吉信が作っています。ただし吉岡源平餅本舗の創業は江戸末期の文久二年ですし、鶴屋吉信も江戸後期の享和三年の創業ですので、和泉流の太郎冠者が言うお菓子が、この二軒の老舗の物なのかどうか・・・

一曲の冒頭のところの言葉にちょっとこだわってみましたが、それはさておき、本当に面白い一番でした。栗の芽を切っておかなかったので、栗が爆ぜて飛んでしまったと、あわてて火を除けて芽を切り直したり、一つ一つの所作が面白い。
以前、今回アドの石田さんがシテで栗焼をなさったのも観ていますが、何度観ても面白い好きな狂言です。
(26分:当日の上演時間をおおよそで記しておきます)
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