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能の花 狂言の花

一観客として、能楽の面白さの一端を伝えられれば、と思っています。 初めてご来訪の方は「はじめに・・・能狂言に寄せて」のカテゴリーをご一読下さい。これまで書いた鑑賞記の索引を載せています。

張良のつづき

語り終えたワキは道行を謡い、土橋に至ります。
すると夢の老人、シテが呼び掛けながら登場してきます。
せっかくやってきた張良に、自分は早くから来て待っていたと語り、張良が遅参したので、さらに五日後の再会を約して、怒りを見せて姿を消します。


張良というとワキの重い曲ということで、今まではついついワキにばかり目がいってしまっていたのですが、この日の渡邊さんのシテは宝生らしい重厚な感じが出ていて、この曲のシテもなかなか面白いと思った次第。
それはさておき、シテは橋掛りから舞台には入らず、そのまま中入りになります。
短い前場ですが緊張感がありますね。


ワキはシテが中入りする姿を立って見送った後、五日後にまた来るとして、ワキには珍しい仕舞のような型を見せ、早鼓で中入りします。
ワキが幕に入ると代わって、アイの張良の家人が登場してきます。
いわゆる立ちシャベリの語りアイですが、張良の見た夢からの一連の話をダイジェストして整理する形ですね。


さてアイが退場した後、作り物の一畳台が大小前に出されてきます。これが土橋という設定ですね。
そして、一声の囃子で後ワキの登場になります。


土橋を見ると霜が降りたままなので、まだ誰も来ていない、と喜びを示してワキ座に着します。ワキの重い習いの曲だけあって、喜びを示すユウケンの型などもあり、常の曲のワキとはだいぶん雰囲気が違います。


さてワキが座に落ち着くと後シテの出になりますが、怪しい老人が今度は鷲鼻悪尉の面を着け唐団扇を持ったいかめしい姿になります。懐中には巻物を忍ばせていますが、これが兵法の書ということですね。
重々しく登場して一畳台上の床几に腰を下ろします。
ワキの張良は畏まって、黄石公に敬意を表します。
さてこのつづきはまた明日に

張良さらにつづき

シテはすぐに巻物を渡そうとはせず、今一度心を見る、と沓を川に落とします。
地謡は履いていた沓を川に落としたと謡いますが、実際にはシテは目付柱の下を見て強く拍子を踏み、これに合わせて後見が沓を投げる形になっています。
ですが「あっ」と思ったら飛びすぎまして白州へ。こんなこともありますよね。


ワキはすぐに、さながら急流に揉まれる様で沓を取ろうとする型を示します。いわゆる流れ足の型ですね。


しかし沓を取ることが出来ずワキ座前に下がりますが、これを受けてツレの大蛇が龍神の姿で登場して来ます。早笛で龍神が登場するとなんだか血が騒ぐ感じがします。
小倉伸二郎さんのツレでしたがスッキリして場面が盛り上がる感じがします。


ツレは沓を取る型をしますが、なにぶん沓は白州に落ちてしまったため、最初からツレが持って出た様子。
この沓を取り戻そうとするワキが剣を抜いて、ツレに迫ります。このやり取りは見せ所。
ツレは剣の光に恐れをなして、沓を差し出し、ワキはこれを取ってシテの足下に置きます。黄石公に沓を履かせたという設定ですね。シテ黄石公はこれを認めて、張良に大事の巻物を与え、目出度しとなる次第です。


ワキが様々に所作をするという珍しい形の能で、観世小次郎信光の作と伝えられています。ワキが活躍する曲は他にも谷行などいくつかありますね。
こういう曲のシテというのは、逆に難しいのではないかと思いますが、昨日も書いたとおり渡邊さんのシテは重厚で、ワキとの対比が面白く、この曲のシテの意味を再認識した感じがしています。


則久さんのしっかりした演技、今後の一層の活躍が期待できますね。
(60分:当日の上演時間を5分単位程度で記しておきます)

鐘の音 野村萬(宝生会秋の別會能)

和泉流 宝生能楽堂 2006.11.26
 シテ 野村萬、アド 野村祐丞


この「鐘の音」も割合良く演じられる狂言ですが、この前は一昨年に、同じ萬さんのシテで観ています。そのときのアドは野村与十郎、現在の万蔵さん。
あの時は亡くなった耕介さんが万蔵を継ぐことになっており、良介さんは久しく絶えていた分家の野村与十郎家を再興されたところでした。
その後の変化を思うといささか感慨深いものがあります。
今回は祐丞さんのアドでの鐘の音、さてどうなるか楽しみにしていました。


アドの主が登場し、成人した息子に黄金造りの太刀を熨斗つけに作ってやろうと言い、太郎冠者を呼び出します。
主は太郎冠者に、鎌倉へ行って金の値を聞いてこいと言いつけて笛座前に座ります。


太郎冠者がこの「金の値」を「鐘の音」と聞き違えたことから、騒動が始まります。
聞き違えをもとにした狂言は少なくありませんが、それぞれになかなか面白く、実際にもそうした喜劇が起こっていたのかも知れませんね。


さて言いつけられた太郎冠者は早速鎌倉に赴き、寿福寺、円覚寺、極楽寺、建長寺と感心しながら、寺々を回って鐘の音を聞き比べます。
この所作、鐘の音の表現がなかなか面白い。


まず寿福寺ということで目付柱で鐘を撞く所作をして「ジャンモーン」と音を表現します。ここでは「大抵の音じゃ(並の音という意味)」と言い、続いてシテ柱の辺りで円覚寺として「パァーン」と音を出して「薄い音」。
笛柱に回り極楽寺になりますが、ここではみだりに鐘を撞くなという高札を読み上げます。人が来ないのを良いことに鐘を撞きますが「ジャガジャガジャガ」と「破れ鐘の音」。
最後に建長寺としてワキ柱辺りで「コーンモーンモーン」と余韻を響かせて良い音だと感心します。
この独り言を言いながら鐘を撞いて歩く所作、鐘の音の見事な表現、まさに萬さんの芸の見せ所でした。


その後、太郎冠者は主に報告しようと、帰ってきます。
さてその後の騒ぎは明日につづきます

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