FC2ブログ

能の花 狂言の花

一観客として、能楽の面白さの一端を伝えられれば、と思っています。 初めてご来訪の方は「はじめに・・・能狂言に寄せて」のカテゴリーをご一読下さい。これまで書いた鑑賞記の索引を載せています。

鱸包丁 山本東次郎(銕仙会定期公演)

大藏流 宝生能楽堂 2018.09.14
 シテ 山本東次郎
  アド 山本則孝

鱸包丁(すずきほうちょう)は十年ぶり。十年前も東次郎さんのシテでしたが、相変わらず見事な仕方話です。しかしながら以前にも書きましたが、この鱸包丁、狂言の詳細を理解して楽しむにはなかなか難しい一曲です。

話の筋自体は簡単で、甥が伯父に鯉を求めて来いと言われたものの、口でごまかそうと鯉を買わずに伯父を訪ね、立派な鯉を手に入れたのだが川獺が半分食べてしまったので、持ってこられなかったと嘘をつきます。甥の人となりをわきまえている伯父は、鱸を手に入れたのでご馳走しようと言い、鱸を持ってこいと奥に声をかけて、さて鱸が来たならばこう料理して、酒を振る舞おうと仕方に話し、さんざんに料理や酒、茶の話までして、甥に礼の仕方まで教え、さて鱸は包丁が食ってしまった、と落とすものです。

これが実際に観てみるとなかなかに難しい。まず伯父が鯉を求めてくるようにと言った理由として、伯父の「かんどなり」という聞き慣れない言葉が出てきます。古語辞典で調べる限りでは官職について官名を名乗ること、またその披露宴とあり、なるほどそんなものかとも思いますが、伯父が官職に就くというのも、どういうことかよく分かりません。

さらに伯父が仕方に話す中身がまた難しい。
まずは鱸をどのように料理して食べたいかと甥に問いますが、甥が鱸を「うちみ」で食べたいと言うと、その「うちみ」について伯父は長々と蘊蓄を語ります。これがなかなかに聞き取りにくいのです。後刻、調べてみると、寛和元年花山院の御代に、政頼(せいらい)を鷹匠として諸国に狩をして巡られた際、遠江國橋本宿の長の家で鯉を料理してもてなしたが、この時の料理が打ち身の始まりで、「打ち身」は鯉か、海の魚ならば鯛にしか用いない料理法だという話です。
花山院の話は不明としても、打ち身は鯉と鯛に限られ刺身と似た料理だったようです。古事類苑を見ると江戸時代後期の貞丈雑記には「うちみと云は、さしみの事也」とあるようですから、刺身と混同されて絶えてしまったと思われます。ともかくこれは調べておかないと、舞台を見聞きしているだけでは、聞き取るのは困難です。

この後も、伯父は鱸の料理を仕方で様々に語り、さらに茶についても色々と語ります。この仕方の見事さは、狂言役者の腕の見せ所と思いますが、正直のところ細々したところはよく分からないのが普通だと思います。
もっとも江戸時代の観客でも、そういう料理を食べる機会のある階層の人たちは別として、一般の観客が本当に分かって観ていたのかどうか、この辺も分からないところではあります。
要は、まあまあそんなものかなあとアバウトに納得しつつ、演者の技量を楽しめば良い、と、そういうことかと思います。そういう意味でも、東次郎さんの演技は素晴らしいものでした。

なお最後の落ちは、鱸は「ほうじょう」が食ってしまったというものですが、「嘘」を意味する法定ないし放生などと、包丁をかけて落としている訳で、これまたそうした知識がないと、なんだか分からないままに終わってしまったということになりそうです。
ちなみに和泉流の狂言「謀生種」の謀生(ほうじょう)は、まさに嘘を意味する言葉です。
(27分:当日の上演時間をおおよそで記しておきます)
*** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** ***
このブログの記載方法などについてまとめています(リンク) 初めてご来訪の方はお読みいただけると幸いです
スポンサーサイト

 | HOME | 

カレンダー

« | 2018-10 | »
S M T W T F S
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

月ごとに

カテゴリー

カウンター


最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

プロフィールなど

ZAGZAG

頑張らない、をモットーに淡々と行こうと思っています。

FC2Ad