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能の花 狂言の花

一観客として、能楽の面白さの一端を伝えられれば、と思っています。 初めてご来訪の方は「はじめに・・・能狂言に寄せて」のカテゴリーをご一読下さい。これまで書いた鑑賞記の索引を載せています。

今年の観能

さて3月も半ばとなり、暖かい日が続くようになってきました。当地偕楽園の梅は既に満開。それだけ花粉症にはつらい日々ともなっています。

振り返って今年の観能ですが、1月は13日の日曜日、九皐会の一月例会を観に行きました。年の初めに翁も良いかなぁと思い、十二月の会の時にチケットを取っておいた次第です。

今年は翁を遠藤喜久さんが勤めました。山本家の狂言「末広かり」を挟んで、駒瀬直也さんのシテで玄象。ほかに仕舞三番の番組です。

同じ1月には、先日旅行記風に書きましたが、金剛能楽堂で翁と内外詣を観ています。こちらは狂言が茂山家の佐渡狐、ほかにやはり仕舞三番の番組でした。
ごくごく近い時間で観世流と金剛流の翁を観て、いくつか気付くこともありました。このため翁については二つの会の翁についてまとめて記載しようと思っています。

そこで九皐会では玄象、金剛会では内外詣についての鑑賞記を先に書いてみようと思います。
まずは玄象の鑑賞記を明日から書いてみます。
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玄象 駒瀬直也(九皐会)

観世流 矢来能楽堂 2019.01.13
 シテ 駒瀬直也
  師長 弘田裕一 姥 鈴木啓吾 龍神 坂真太郎
  ワキ 宝生欣哉
  ワキツレ 坂苗融 大日方寛
  アイ 河野佑紀
   大鼓 國川純、小鼓 幸正昭
   太鼓 小寺真佐人、笛 藤田次郎

玄象はこのブログを書き始めた頃、当時の梅若六郎さんのシテで拝見した際の鑑賞記を書いています。それ以来ですので12年以上の間が開いています。玄象は、観世流以外は絃上と書きますが、観世流が表記を変えたのは割合新しいようで、少なくとも大正期までの本では「絃上」と書かれているようです。この変更の理由などは承知していませんが、琵琶の名前について、絃上ではなく玄象とする資料があったのかも知れません。

この曲、名前だけではなく詞章や演出なども流儀によって割合に相違が大きいそうです。しかしながらこれまで何度か観ているものの、観世流の演能しか観ていませんので、流儀による違いは実際のところ分かりません。いずれ機会をみて各流の演能を観てみたいものと思っています。

さて舞台にはツレの師長がワキ従臣、ワキツレの一行を伴って登場してきます。師長は色大口に金地の狩衣、風折烏帽子を着けて先に出ます。ワキは白大口に法被、ワキツレ二人は素袍上下です。
向かい合っての次第の後、地取りでワキとワキツレが腰を下ろし、師長の名ノリ。ワキが受けて、師長は天下に隠れない琵琶の名手だが入唐の望みあって、その道すがら須磨の浦に下向されたと述べます。

師長のサシからワキ・ワキツレの道行。
湊川から生田を抜け、心は筑紫に向かいながらも須磨の浦にやって来たと謡ってワキの着きゼリフ。「先づ かうかう御座候へ」で師長がワキ座で床机に腰を下ろし、ワキ、ワキツレも着座します。
一声が奏されて、シテ、姥の登場となりますが、この続きはまた明日に
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玄象のつづき

先に出たツレ姥は無紅厚板に緑の水衣、シテ老人は小格子厚板に腰蓑を着け、水衣。桶を右の肩に担って登場し、ツレ一ノ松、シテ三ノ松にて一セイ。ツレの二ノ句、同吟と続いて、アシライで舞台に入ります。
姥が正中、シテが常座に立ってシテのサシ謡。続いてツレ、シテ交互に謡い継いで須磨、明石、由良、住吉と見渡す景色の面白さを謡います。

地謡が下歌、上歌と汐汲みにまつわる様々を謡い、最後に「この須磨の浦の汐汲まん」とおさめるのにあわせ、シテは右肩にまとめて担っていた桶を下ろして、舞台をゆっくり動きつつ汐汲む様を見せます。

シテが塩屋に帰って休もうと言い、シテが正中、ツレがワキ正に下居すると、ワキが立ち上がって宿を乞います。
ワキは太政大臣師長公が入唐の望みあって当浦に下向されているので、一夜の宿を貸して欲しいと言い、シテは一度は断るものの宿を貸すことにしますが、続けてツレ、シテ謡い継いで、師長が雨の祈祷の際に神泉苑で琵琶の秘曲を弾いたところ、大雨が降り、雨の大臣と呼ばれるようになった次第を述べる形。なあんだ、よく知ってるんじゃないの…と言いたくなりますが、ともかくも地謡が受けて、須磨の浦の粗末な家ではあるけれど、眠れぬままに琵琶を遊ばされよ、我等も聴聞しようと二人の心を謡います。

ワキが師長に声をかけ、師長のサシ。師長は謡いつつ扇を広げると左手に持ち、琵琶弾く形となります。地謡が続けて謡いますが、にわかの雨に「管弦の障なるらん」と謡い、師長は扇を閉じて右手に持ち、琵琶を弾くのを止めた態でワキ正を向きます。

シテがなにゆえ琵琶を止められたのかと問い、ワキが村雨が降ってきたので止められたのだと答えると、シテは村雨を認めて、ツレに苫を取り出すようにと言います。二人は立って苫を取り出し板屋に葺きかけた形。
不思議な仕業ですが、さてこのつづきはまた明日に
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玄象さらにつづき

さてこのやり取りが本曲の肝心な部分の一つですが、ワキがどうしてさほど雨漏りもしない板屋に苫を葺いたのかと問うと、シテは琵琶の調子が黄鐘、板屋を敲く雨の音は盤渉で調子が合わないので、苫を葺いて調子を合わせたと答えます。

このやり取りをどう受け止めるのか、いろいろとありそうな気がします。ですが、ともかくも舞台では地謡が、最初から常人ではないと思っていたが、これは琵琶琴を弾かないということがあろうか、と謡い、この謡のうちに後見がシテの肩上げを下ろして常人でないことを示します。

シテツレの謡となり、二人は謡いつつ、シテが扇を広げて左手に持ち琵琶弾く形です。
ここで床几を下りて後ろ向きになっている師長が「師長思ふやう」と謡い出し、地謡が続けて、自分は日本で琵琶の奥義を究め入唐しようと思っていたが、目のあたりにこのような演奏を聴き、渡唐を思いとどまったと謡います。これに合わせて師長は立ち上がります。

ツレが声をあげ、旅人がお立ちと知らせると、シテ、ツレは謡いつつ立ち上がり、地謡が続けて謡うに合わせ、シテが師長に寄って袖を引き、正中まで下がって師長と向き合います。
師長はシテ柱を向いたまま「何しに留め給ふらん」と謡い出し、二人の名を問います。
これにシテ、ツレは答えて、自分たちは村上天皇と梨壺女御であると明かし、地謡が、師長の入唐を止めるために夢中に現れてきたと言って姿を消してしまった様を謡う中、師長に向かってサシ込み開キ、常座へ進んで一度正面に向き直り、あらためて来序にて中入となりました。

二人が幕に姿を消すと、来序が狂言来序にかわり、アイが登場してきますが、このつづきはまた明日に
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玄象さらにさらにつづき

括り袴に水衣、黒垂に面をかけて登場したアイは、常座に進み出ると、海神の都、大龍王の眷属と名乗ります。
前場をダイジェストする形で、師長が雨の大臣と呼ばれるようになった謂われから、入唐を思い立って須磨にやってきたこと。村上天皇の霊が仮に老夫婦の姿で現われ師長に琵琶を所望し、その最中に村雨が降り、苫を葺いて黄鐘、盤渉の調子を合わせたこと。師長が常人の業ではないと驚き、老夫婦に琵琶琴を所望しその見事さに入唐を思いとどまったことなどをシャベリます。
さらに村上天皇が琵琶「獅子丸」にて秘曲を弾かれるので、龍神は確かに承れ。心あるものは天皇のお姿、師長公のお姿も拝むようにと触れて退場します。

出端が奏されて後シテの出。白の袷狩衣に赤の指貫。直纓の初冠を着けていますが、黒垂などはありません。常座に出たシテは村上天皇と名乗り、唐土から届けられた三面の琵琶のうち、獅子丸は龍宮に取られてしまったが、これを召し出して弾こうと謡いつつ正中に出て幕方を向きます。さらに「いかに下界の龍神確かに聞け 獅子丸持参つかまつれ」と謡ってシテ柱に行きカカリ、常座に立つと早笛。シテは笛座前で床几に腰を下ろします。

早笛に乗って龍神が琵琶を持って登場し師長に渡します。
龍神が舞台を廻って退場するとシテが立ち上がって常座へ。サシ込み開いて答拝し早舞。当日は舞出しが早舞にしては重いかなあと思っていたところ、五段の舞でなるほどと納得したところです。
早舞を舞上げるとノリ地でシテが舞い「須磨の帰洛ぞありがたき」と留拍子を踏んで終曲となりました。
久しぶりに観た玄象ですが、なかなかに面白い一曲と思ったところです。シテの駒瀬さんがもしかして体調が悪かったのはないか、といささか気になったのですが…
(94分:当日の上演時間をおおよそで記しておきます)
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