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能の花 狂言の花

一観客として、能楽の面白さの一端を伝えられれば、と思っています。 初めてご来訪の方は「はじめに・・・能狂言に寄せて」のカテゴリーをご一読下さい。これまで書いた鑑賞記の索引を載せています。

大典 片山九郎右衛門(横浜能楽堂特別企画公演)

観世流 横浜能楽堂 2019.07.20
 シテ 片山九郎右衛門
  ツレ 味方玄
  ワキ 宝生欣哉
  ワキツレ 則久英志 宝生尚哉
   大鼓 亀井広忠、小鼓 成田達志
   太鼓 前川光範、笛 杉市和

奉祝の芸能の最後は観世流能の大典。
本曲は大正天皇の即位大典を祝して作られたもので、配布された解説によればドイツ文学者の藤代禎輔が作詞、二十四世観世左近元滋が作曲。大正4年11月に京都の片山能楽堂で御大典奉祝能として初演されたとあります。

元滋はもともと片山家に聟入りしていた観世宗家三男の七世片山九郎右衛門、後に観世家に復帰した観世元義の長男で、八世九郎右衛門を襲名した博通の兄にあたります。二十三世観世清廉の養子となって二十四世となりますが、片山家とは大変深い繋がりがあり、片山能楽堂で初演されたのもなるほどと思うところです。
今回のシテを演じた十世九郎右衛門、片山清司さんは八世博通の孫にあたりますので、これまた深い縁あっての上演かと思います。
シテは菊花の付いた輪冠を被りますが、今回の公演では片山家に所蔵されていた古いものを着けました。九郎右衛門さんは、虫干しの度に何に使うものだろうと疑問に思っていたそうですが、今回、日の目を見たということのようです。

今回の上演では西野春雄さんの補綴、監修により詞章、演出の見直しが行われていて、ワキの勅使が訪れる場所も平安神宮から伊勢神宮へと変更されています。実際に観てみると手許の大典の謡本とは大きく違っていまして、シテの舞、ツレの舞も新たに作られたものだそうです。
このため一応メモは取ってきましたが、記録としてはかなり怪しいものになっています。狂言の鷺と同様、このあたりはご容赦ください。

なお今回の改元に際しては、山階彌右衛門さんが5月に住吉大社で、10月に観世能楽堂で大典を上演されます。5月の会は観ておりませんので、しかとは分かりかねますが、ネットの情報などをみると、彌右衛門さんはもともとの謡本にある形でなさった様子です。10月もそうされるのか、興味あるところです。
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大典のつづき

今回の上演は様々に変更が加えられている様子で、復曲能や新作能にも近い感じを受けるところもありました。
まず舞台にいきなり一畳台が運び出されて大小前あたりに据えられます。紺地に大振りな輪繋ぎの文様、緋毛氈の一畳台ですが、これが据えられてからお調べが始まりました。
その後、地謡、囃子方が舞台に登場し座に着くと、あらためて引廻しをかけた小宮が出され一畳台に載せられます。

次第の囃子が奏されてワキ一行の登場。ワキは風折烏帽子を被り、装束付けには長絹とあるのですが白大口に黒の狩衣で登場しました。ワキツレ二人は素袍上下ですが、則久英志さんと宝生尚哉さん。尚哉さんは欣哉さんのご二男だそうです。
型通り舞台中央で向き合って次第を謡い、ワキの名乗り。当今に仕える臣下と名乗り、即位の大典にあたり奉告の宣旨により伊勢神宮へ参向すると言い、ワキツレを促すと、ワキツレが承り候と声を上げ、一同は舞台から橋掛りへと進み、三ノ松手前で折り返して舞台の方に向きサシ謡に。

謡の詞章はあらたに作られたもののようで、全くの別文です。なにぶん大正初年に作られた曲ですので、このサシの部分にも「宇内に国は多けれど 類まれなる神国の」などとあり、現代に上演するにはいささか気になる部分が多々あります。こうした点をふまえて思い切って詞章を改められたようで、半分以上の詞章が新たなものとなっている様子でした。

ワキが一ノ松に立っての謡から地謡に。地謡ももともとの「悠紀主基の 御田も穂に穂をさかせつつ」で始まる詞章とは全く別物で、聞き取った限りでは「実に潔き御裳濯の 実に潔き御裳濯の 川の流れは滔々と 底澄み渡るさざれ石 巌となりて苔のむす 松の葉色の常磐木の・・・」と謡われましたが、その後はメモが取れませんでした。この地謡の途中でワキ一行は歩み出し、ワキはワキ座にワキツレはそれに従う形で着座します。
ワキが、この宮居に報告の式が終わり心を澄ますと言い「折りしもあれ」と腰を浮かすと地謡になりますが、このつづきはまた明日に
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大典さらにつづき

もとの本では、地謡が「不思議や社壇の方よりも 不思議や社壇の方よりも 異香薫じて瑞雲たなびき微妙の音楽聞え来て 天津少女の舞の袖 返す返すも面白や」と謡って天女ノ舞となっています。
この場合、ツレ天女がどこで舞台に出てくるのか不明なのですが、今回はここも手が入っていまして、謡は「不思議や瑞雲たなびきて」と少しばかり修正された形で始まり、「社壇」には触れずに「返す返すも面白や」の謡い納めで下リ端が奏され、天女の出となりました。

天女は鳳凰の天冠で、緋の文様入り大口、白地に金で文様を散らした舞衣で登場し、常座で左右して下居、答拝して舞に入りました。もとの本では天女ノ舞になっていますが、舞は下リ端の舞の変形のような感じで、今回新たに作られたものと思います。
国栖では後ツレ天女が下リ端の舞を舞いますが、なんとなくその形を下敷きにしたのかとも思うところです。
舞は途中で下居する形があったりなど変化に富み、優美なものでした。味方玄さんは、昨年のテアトル・ノウで屋島を拝見して魅了されましたが、天女のような優美なものもまた見応えがあります。

舞上げると「少女子が 少女子が」と渡り拍子の地謡で舞い、「雲の通い路ふきとぢて 少女の姿とどむらん」と雲扇。シテの出を迎える形を見せてサシて舞台を廻り、角から「玉の階踏み轟かし」と進んで下居。引廻しが下ろされて「神体出現 ましませり」とシテが姿を現しました。

シテの冠は先に書いたとおり菊花の付いた輪冠、だいぶん古いもののようでいささか色もあせた感じですが、平成の時なのか昭和の時なのか、はたまた100年前の大正のものなのか、もはや不明の様子ですが、ともかくも大典でのみ用いられてきたもの。
面は、装束付けには三日月とあり、5月の彌右衛門さんの舞台も三日月だった様子ですが、今回は邯鄲男でした。
半切に青みのかかった袷法被を衣紋着けにしていました。
さてこのつづきもう一日明日に
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大典さらにさらにつづき

このシテの出から後も詞章はほとんどと言って良いくらい作り直されています。
まあ、もともとシテの謡い出しが「あら有難の神国やな」ですし、シテに続くツレの謡には「わきて明治聖帝の御代に至り 開国進取の国是を定め」などとあり、「天壌無窮の皇運を 扶翼せよとの御志」といった詞章も見受けられるところ。後の世までも演じられるよう普遍性のある詞章に直したということのようです。

シテ、ツレの謡から地謡となり、シテの舞に入っていきます。
もとの本では神舞と指定されているのですが、これまた新たに作られた舞の様子で、極めて早い。神舞をもとに作られたのだろうと思いますが、早くまた手数も多く、力強く新しい時代の到来、新帝の即位を言祝ぐ舞と感じました。
囃子も、大丈夫かと思うようなくらいの早さ、力強さでした。

舞上げるとツレ天女も立ち、地謡で二人の相舞。舞台を二人が何度も廻るような形は、今まで見たこともありませんでしたが、新しい能の形と言ったら良いか意欲的な演出だったかと思います。ちなみにツレ天女の面は節木増だったようで、ツレと言いつつ両シテに近いような扱いだったのかも知れません。
最後はツレが橋掛り、シテが常座に立ち、シテの留拍子で終曲になりましたが、驚いたのはその後で、シテ、ツレにつづきワキ一行が退場した後、一畳台と宮をそのままに、囃子方と地謡も退場したことです。こういう形は初めて見ました。

全編に近く詞章に手が入っていたせいか、そもそも上演が稀なこともあってか、いささか地謡に乱れもありました。またシテとツレが舞台上で廻るうちに、なんだか窮屈そうに見えたり、シテが舞の途中で一畳台に触れたりなど、正直のところ気になる点は多々あったのですが、そうしたものを含めて意欲的な取組として楽しめた、というのが実感です。

ぜひ令和の次の時代にも上演されることを祈りますし、平時でも時々は上演されることを期待したい一番でした。
(50分:当日の上演時間をおおよそで記しておきます)
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