能の花 狂言の花

一観客として、能楽の面白さの一端を伝えられれば、と思っています。 初めてご来訪の方は「はじめに・・・能狂言に寄せて」のカテゴリーをご一読下さい。これまで書いた鑑賞記の索引を載せています。

玉葛さらにさらにつづき

シテは「乱るる色は恥ずかしや つくも髪」と謡ってカケリ。
舞台を一周半ほど廻る程度のものですが、妄執に惑う姿を現しているということでしょう。

カケリのあと、シテ、地謡の掛け合いから、地謡の「立つやあだなる塵の身は」と扇広げつつ常座へ戻って、正向いて「はらへどはらへど執心の」とユウケンして執心を払う気持ちを所作に表します。
地謡「ながき闇路や」と聞いて、左手に髪を取りつつ「黒髪の」と謡ったシテは、目付から大小前へと回り、「むすぼれゆく思いかな」とシオリます。
後見の中村孝太郎さんが出て左に垂らした髪を直し、「げに妄執の雲霧の」と地謡の中ノリ地となって、これに合わせてシテの舞になります。

このキリの部分は仕舞としても良く演じられるところ。最後は「心は真如の玉葛 長き夢路はさめにけり」と、シテが常座で留拍子を踏み、妄執から解放された態で終曲となりました。
きりっとした舞で美しく、とくに足許が綺麗でした。宗家の重責ってあるんだろうと思いますが、よく頑張っておられるなあと思う次第です。

さて、葛も鬘も、同義ではあるらしいのですが、とはいえ源氏物語は玉鬘と表記されるのが普通なのに、わざわざ観世以外の各流が葛の字を使っているのも、なにがしかの意味を込めたものかもしれません。
初瀬といえば、長谷寺を訪ねたのはもう三十年ほど前になってしまいましたが、奈良の町とはまた違った、深い味わいのある地であったと記憶しています。

この曲の描きたかった世界も、初瀬の土地柄と無縁ではないように思えます。
(75分:当日の上演時間を記しておきます)
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