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能の花 狂言の花

一観客として、能楽の面白さの一端を伝えられれば、と思っています。 初めてご来訪の方は「はじめに・・・能狂言に寄せて」のカテゴリーをご一読下さい。これまで書いた鑑賞記の索引を載せています。

俊成忠度さらにつづき

登場したシテは、箔に白大口、長絹を肩脱ぎにし、右折の烏帽子に白鉢巻。地謡の謡いっぱいに常座に出てサシ謡です。

「前途程遠し 思を雁山の夕の雲に馳す」と謡いだします。
いささか気になって確認してみたのですが、この句は平家物語巻第七「忠度都落」に出てきます。「忠度都落」では、都落ちした忠度がわずかな手勢を連れて俊成のもとに立ち戻り、これまで詠んだ歌のうちから書き留め置いた巻物を差し出して、勅撰集に一首でも入れて欲しいとの望みを言い置いて立ち去ります。

俊成が見送っていると、忠度と思しき声で「前途程遠し 思を雁山の夕の雲に馳す」と高らかに口ずさむ声が聞こえてきたとあります。この一句、和漢朗詠集に大江朝綱が鴻臚館にて渤海の使節を送る宴で読んだとして収録されているようです。おそらくは別れの朗詠として平安末期には広く知られていたものを、忠度が口ずさんだと平家物語の作者が書いたものでしょう。
もっとも、平家物語の最も古い形ではないかと言われる延喜本には、この朗詠が書かれていないようですので、琵琶法師が平曲の形に整え流布するうちに書き加えられたものと思われます。

この「忠度都落」では、巻物を俊成に託した忠度が「今は西海の波の底に沈まば沈め、山野にかばねをさらさばさらせ。浮き世に思ひおくこと候はず。さらばいとま申して」とて立ち去り、その後、見送る俊成に「前途程遠し」の声が聞こえてきたという場面になります。
サシ謡は「前途程遠し」の一句の後「八重の潮路に沈みし身なれども」と続いて、平家物語のこの段をもとに書かれたことがよくわかります。
平家物語では、後に俊成が勅撰集である千載集を編んだ際に、忠度の歌「さざなみや 志賀の都は あれにしを 昔ながらの 山桜かな」を、読み人知らずとして入れたことが書かれますが、本曲はその歌を巡って忠度の霊が現れるという設定であり、作者はよくよく平家物語や和歌に通じた教養人であったことがうかがえます。
ともかくも作者の話は後ほどにして、舞台の様子は明日につづきます。
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このブログの記載方法などについてまとめています(リンク) 初めてご来訪の方はお読みいただけると幸いです
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