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能の花 狂言の花

一観客として、能楽の面白さの一端を伝えられれば、と思っています。 初めてご来訪の方は「はじめに・・・能狂言に寄せて」のカテゴリーをご一読下さい。これまで書いた鑑賞記の索引を載せています。

御裳濯のつづき

ワキは、この小田を見るに「渇仰の気色」が見えるのはなぜかと問いかけます。
この「渇仰の気色」がいささかわかりにくいです。手許の野上豊一郎さんによる解註謡曲全集の御裳濯、昭和二十四年の版ですが、これではこの部分のワキの詞章は「これなる小田を見れば、田水豊なるに、なほ河水を水口にまかせ入れ、あまつさえ渇仰の気色見えたり」とあります。水が豊かとあるので、渇仰は深く仏を信ずる心持ちの意と素直に入ってきますが、当日のワキの詞では、小田を見れば渇仰の気色とあって、水が豊か云々の言葉がありませんでした。これだと、もしや田が乾いているので文字通りに水を欲しているのかとも思えてしまう感じがします。

ともかくもシテの老人はワキに向き合い、この田は神の御田で、さらにこの川は御裳濯川という神水なので、田水は豊だが神水を入れて祭事を行っているのだと答えます。

ワキは重ねて、御裳濯川とは何時の代から呼ばれている名なのかと問います。シテは十一代垂仁天皇の皇女倭姫が神鏡を奉じて国々を巡るうちに、二見浦から川沿いに上り、その折に汚れてしまった裳裾をこの川で濯いだので、御裳濯川と言うのだと答えます。
さらにツレがワキに向かい、その折に倭姫が田を作る翁に神が御鎮座されるような場所はあろうかと問うたと言い、これを受けてシテは、翁が川上に三十八万年の間、この山を守護してきた者がおり道を知っていると答えたことを語ります。
さらにこの時の田作りの翁こそ、今の興玉の神であると続け、ツレともどもに、その山を神路山、川を神路川といい、流れ久しく御影も濁らぬ御裳濯川の神徳深い水田なので、神に任せて田作りをしているのだと謡います。

ワキはこれを聞き、有難いことと感じた上で、御裳裾を濯いだ場所はどこかと問います。シテはワキに向き合い、それはこの瀬の辺りのことで、それ故この辺りを神が瀬というのだと答えます。
この神が瀬に、ワキは神風なら良く聞く言葉だが神が瀬とは面白いと言い、シテツレの掛け合いから地謡が「山のべの 御井を見かへり神が瀬の 伊勢の乙女ら あひ見ゆるかな」という古歌も、倭姫の古を詠んだものと謡います。

この歌は万葉集巻一にある「山のべの御井を見がてり神風の伊勢をとめどもあひ見つるかも」のようですが、この歌の神風を神が瀬に替え、いかにも古歌にあったかのように使っているところがまた能作者の腕かも知れません。
ともかくもこの地謡のうちにツレは笛座前に移り、シテはシカケ開キしてワキに向かって出て開キ。舞台を廻って常座に戻りシカケ開キしてワキに向き、四足ほど出て正中で下居。杁を置いて扇に持ち替えます。
さてこのつづきはまた明日に
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このブログの記載方法などについてまとめています(リンク) 初めてご来訪の方はお読みいただけると幸いです
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