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能の花 狂言の花

一観客として、能楽の面白さの一端を伝えられれば、と思っています。 初めてご来訪の方は「はじめに・・・能狂言に寄せて」のカテゴリーをご一読下さい。これまで書いた鑑賞記の索引を載せています。

夜討曽我またつづき

一声の囃子で幕が上がり、古屋を先頭に、御所五郎丸、侍二人が出て一ノ松から橋掛りに並びます。古屋は法被肩上げ、半切で、残る三人はモギドウ。「鬨を作って騒ぎけり」で舞台に入りワキ座から地謡座前に並びます。
早鼓の囃子でシテの出。左手に松明を持ち一ノ松で謡い出します。「此処彼処に」と左右に面を切って見まわす形で出て「屍を曝さん無念やな」と松明を投げます。
地謡でツレ四人がシテを向き、「鍔元くつろげ」で太刀に手を掛け構えます。シテは太刀を横に構えて「あらものしやおのれ等よ」と謡い、これを受けて四人は構えを直します。地謡でシテは太刀を前にして舞台に入り「太刀取り直し」の謡に常座で上段の構え。「かかりける処に」で古屋の角当さんが大小前でサシ込開キ、六拍子踏んで太刀を抜き「張良が秘術を」でシテに切りかかります。二人の斬り合いとなりますが、シテが古屋を討ち、古屋は前に倒れて切戸から退場します。
シテは後見座で直垂を脱ぎ、モギドウ白鉢巻の姿になります。ノリ地の謡で、宿直の侍二人は鏡板にクツロギ、御所五郎丸の長山さんが笛座前で白衣を被きます。立廻でシテは五郎丸に寄りますが、一度様子を見た後、常座に戻ってしまいます。
シテが「今は時致の運槻弓の」と謡い、地謡が続けると、五郎丸はシテを向いて笛座側から後ろに回り「むんずと組めば」でシテを後ろから抱き留めてしまいます。シテが誰何し、ツレが御所の五郎丸と名乗ると、シテは太刀を捨て二人揉み合う形になります。
「えいやえいや」と揉み合いつつ大小前まで回り、シテが五郎丸を投げて「時致上になりける処を」とガッシして正先に出ますが、宿直の侍二人がシテに寄って縄をかけ、そのまま幕へ引き連れていき退場。五郎丸がこれを見送って常座に立ち終曲となりました。
(80分:当日の上演時間をおおよそで記しておきます)

さて舞台の様子は以上でしたが、ひるがえって、そもそも曽我兄弟の敵討ちというのはどういう経緯だったのか、このあたりを再度書いておこうと思います。再度というのは、十数年前に宝生流佐野玄宜さんの小袖曽我を観た際の鑑賞記にも、このあたりの事情を書いておいたからなのですが、ここで改めて触れておきたいと思います。

日本の三大敵討ちというと、曾我兄弟の仇討ち、鍵屋の辻の決闘そして赤穂浪士の討ち入りの三つですが、歌舞伎はいずれも劇化しているのに対して、能では曽我兄弟の話のみが取り上げられています。能楽は室町期から体制側の芸能になっていたために、江戸時代になってからの鍵屋の辻や赤穂事件は取り上げられなかったのでしょう。
さてその曽我兄弟ですが、平安時代末期、現在の伊豆地方に勢力を張っていた豪族、工藤祐隆がそもそもの発端です。「工藤」に藤の字がある通り、工藤氏は藤原南家の系譜にあり、祐隆はその六代目だそうです。さてその祐隆の嫡男祐家は祐隆よりも先に亡くなってしまいます。祐家には祐親という子がいて嫡孫ということになるので、祐家に所領をすべて相続させれば、その後の事件は起きなかったかも知れません。
しかし祐隆は、後妻の連れ娘が生んだ子を養子にして工藤祐継と名乗らせ、伊豆半島の東半分にも及ぼうかという所領の大部分を与えてしまいます。一説には祐継は祐隆と後妻の連れ娘との間にできた子とも言われます。孫なのか子なのか、崇徳天皇のようでもありますが。
その祐継が早く亡くなると、伊東に所領を持ち伊東氏を名乗っていた祐親は、祐継の嫡男である工藤祐経の後見人となり、実質的にその所領を横領してしまいます。このため工藤祐経は伊東祐親をたいへん恨んでいました。
時に伊東祐親が巻狩を催した際に、工藤祐経は郎等二人を使わして、祐親の嫡男で河津に所領を持ち河津三郎と呼ばれていた祐泰を殺してしまいます。この河津祐泰の二人の子が一萬丸と箱王、後の十郎祐成と五郎時致です。祐泰の妻の満江御前は二人の子を連れ、同じく豪族の曽我祐信に嫁し、一萬丸は元服して曽我十郎祐成を名のり、箱王は箱根権現に稚児として預けられます。
伊東氏の一族は、平家方についたために以後没落してしまいます。一方、先見の明があったのか、工藤祐経は頼朝に仕えて頭角を現していました。十郎、五郎の兄弟は、父河津祐泰の敵を討とうと、長年工藤祐経をつけねらっています。箱王は出家を嫌って出奔し、北条時政を頼って元服して五郎時致を名のり、いよいよ兄弟敵討ちと、従者の団三郎、鬼王ともに出掛けるというのは、鑑賞記中に書いた通りです。
このあたりが曽我兄弟の敵討ちの経緯ですが、十番斬の話などは明日につづけようと思います。
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このブログの記載方法などについてまとめています(リンク) 初めてご来訪の方はお読みいただけると幸いです
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