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能の花 狂言の花

一観客として、能楽の面白さの一端を伝えられれば、と思っています。 初めてご来訪の方は「はじめに・・・能狂言に寄せて」のカテゴリーをご一読下さい。これまで書いた鑑賞記の索引を載せています。

夜討曽我またまたつづき

さて十番斬の話に移ろうと思います。
以前、宝生流の高橋亘さんと、高橋憲正さんが夜討曽我をされた時の鑑賞記にも書きましたが、夜討曽我はなんとも中途半端な印象の構成になっています。前半では敵討ちを前にして、団三郎と鬼王を帰す別れの場面が描かれて味わい深い展開ですが、間狂言を挟んで、後場になると既に敵討ちは済んで兄十郎は行方不明。シテ五郎が登場し十郎に呼びかけますが、何度呼んでも返事はなく、十郎が討たれたと悟った五郎は、古屋や御所五郎丸などと斬り合いになり、郎等に捉えられて連れ去られる。なんだか盛り上がりに欠ける展開です。
曽我物語でも、五郎時致はこの時取り押さえられて翌日頼朝に尋問されたとあるので、この終わり方はやむを得ないと思うものの、劇としてみるともう少し何か欲しいという欲が出て来ます。十番斬の小書がいつ頃から出てきたのか分かりませんが、このちょっと物足りない感をうまく救ってくれるように思います。

私は小書の方がもともとの形で、小書無しの現行曲は省略された形なのか、と思ったりしていたのですがこれは間違い。小書は廃曲になった十番切を取り込んだものと思われます。
さてその廃曲の十番切ですが、謡曲三百五十番集収録の詞章によると、まずツレの二の宮という女が登場します。曽我兄弟が狩場のお供に紛れて祐経を討とうとするのを、「わらはも遁れぬ中なれば」宮仕えの隙をみて敵のもとへ導こうと思う旨を述べます。吾妻鏡や曽我物語には、この敵討ちの場で二の宮という女が手引きをしたという記述はありませんが、一方で曽我兄弟の姉が頼朝の御家人である二宮朝定に嫁しており、これを意識しての設定なのかも知れません。
続いて、シテ五郎、十郎の兄弟が登場します。すると二の宮が国々の武士の幕の内を詳しく教え聞かせて、祐経の幕を示し、涙ながらに退場します。兄弟二人は仮屋に忍び込み、それぞれが名乗って祐経を討ち「果報いみじき祐経も 二つになってぞ失せにける」となります。祐経の言葉なり謡なりは記されていませんので、祐経自身は登場せず、おそらくは烏帽子や直垂などをもって祐経に見立て、五郎、十郎が敵を討った様のみを見せるのだろうと思います。
ここから地謡が宿直の者達が慌て騒ぎ、兄弟に打ちかかる様を謡い、十番切りの活劇となる様子です。新開が謡い、十郎と斬り合った後に逃げますが、これを五郎が追いかけて中入となります。

後場では新田忠綱が登場し、十郎と斬り合いになります。しかし疲れ切った十郎は新田に攻められて受け太刀となり、打ち伏せられてしまいます。新田はそのまま立ち去ろうとしますが、十郎は新田に首を討てと言い、最後は新田が十郎を討って終曲となる形です。

小書の十番斬は、兄弟が祐経を討ったところまでが間狂言で示されるので、その後、宿直の侍たちが打ちかかってきたところから、新田が退場するまでを取り込んだ形です。
間狂言は、大藏流が大藤内を出す形ですので、おそらく大藤内がもともとの形だったのでしょう。しかし小書無しの夜討曽我では、全体のバランスの中で大藤内の部分が重くなり過ぎてしまう感じがします。和泉流の大藤内の小書に比べ、大藏流の形は少し簡略なようですが、とは言え小書無しの後場は短時間に場面が展開してしまうので、間狂言はシャベリの形のほうがおさまりが良いのかと思います。

それにつけても数多くの曽我物の中で、肝心の兄弟が敵の祐経を討つ場面があるのは、廃曲となった十番切だけです。しかも祐経は登場しない様子ですので、このあたりの能の処理の仕方は、本当に興味深いところです。
この項終わり
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