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能の花 狂言の花

一観客として、能楽の面白さの一端を伝えられれば、と思っています。 初めてご来訪の方は「はじめに・・・能狂言に寄せて」のカテゴリーをご一読下さい。これまで書いた鑑賞記の索引を載せています。

訴訟をめぐる能楽・・・日本人のバイタリティつづき

さて、菅浦文書によると150年もの永きにわたって、領域をめぐる隣村との土地争いが続いたという話を書きました。
この訴訟がどのように展開したのか、岩井さんの「月ノ浦惣庄公事置書」には訴訟をめぐる様々な駆け引きなどが詳しく書かれています。もちろん小説ですから史実そのままという訳ではないでしょうけれども、土地をめぐる複雑な権利関係と、それを利用しながら、したたかに訴訟を進めようとする村人の動きに大変興味をそそられたところです。

「能の花 狂言の花」と題した能楽を巡るブログですので、ここで能楽に見える訴訟の話に目を向けてみようと思うのですが、歌舞伎や落語、講談などでは大岡政談もののようにお裁きそのものをテーマにしているものが見られる一方、能楽では訴訟自体が取り上げられたものは見あたりません。

強いていえば、藤戸の前場で、ワキの佐々木盛綱が新たに領地となった児島に入部し、訴えある者は申し出よと触れさせたのに応えて、息子を亡くした母がやってくるという話が、訴訟らしい部分といえましょうか。(このブログでは田崎隆三さん観世銕之丞さんの藤戸の鑑賞記を書いています)
また訴訟の前段という形になりますが、藤栄では土地の相続権をめぐる争いが物語のベースになっています。(藤栄は高橋亘さんの演能について書いています)

しかし訴訟自体を扱ったものは少ないのですが、砧(関根祥人さんの演能の鑑賞記を書きました)では九州芦屋の何某が、土地をめぐる訴訟のため都に上り早三年という設定ですし、柏崎では鎌倉に訴訟のため赴いた柏崎の何某が病死してしまったというのが発端になっているというように、長い訴訟のための留守が物語の発端になっている曲が見受けられます。

これは狂言も同様で、訴訟そのものを狂言に仕立てた曲は見あたりませんが、麻生や雁盗人(和泉流では雁大名・・・深田博治さんのときの鑑賞記があります)、鬼瓦(善竹十郎さんの鑑賞記を書きました)や萩大名、入間川(野村万蔵さんの上演について鑑賞記を書いています)など、訴訟のため長らく在京した大名が、都や帰り道などに騒動を起こすという一連の狂言があります。

神男女狂鬼といわれるように、能の中に訴訟のような現実社会の業が取り入れられる余地は少ないでしょうし、土地をめぐる訴訟ではおかし味を大切にしたい狂言にもなりにくかったのだろうと思います。しかし、訴訟で長く領地を離れるという設定が多々見られることから、こうしたことが珍しくなかった当時の事情がうかがわれるところです。
このつづきはまた明日に
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このブログの記載方法などについてまとめています(リンク) 初めてご来訪の方はお読みいただけると幸いです
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